『海賊とよばれた男』(下) 百田尚樹

下巻は戦争が終わってから、国岡鐡造の95年の生涯が終わるまでの話。

後半の方が濃かったです。

話のスケールもどんどん大きくなっていきます。

 

戦後の石油不足の中で、同業者からも、アメリカのメジャーからも睨まれた国岡商店は、その活路を中東イランに見出します。

イランならメジャーに支配されていない石油が手に入る。

が、イランの石油は、国有化を目指すイラン政府と、長年にわたって搾取しつづけてきたイギリスの間で争いが起きており、もしイランから石油を輸入するとなると、イギリスから攻撃される可能性が高い。

さて、どうする国岡鐡造!

 

という感じで、このイランの石油を巡る話が、下巻の見せ場となっています。

「イランから石油を運び出し、無事に日本まで届けることができるか」は、なんとなく結末がわかっていても、引き込まれます。

 

でも、このイランの石油のシーンよりも印象に残ったのは、恩人である日田氏や前妻のユキさんとの関係を描いたシーンでした。

日田さんは最後報われた気がしたので、よかった。

でも、ユキさんの方が…。

 

日本の石油にまつわる話はとても勉強になるのですが、やっぱり人間の感情の方が小説としてはおもしろい。

こういう鐡造の生々しい部分があると、もっと感情移入できたのかもしれません。

 

全体としては、国岡商店を持ち上げすぎていて、そこが最後までひっかかりました。

実際はどうだったのか。

国岡鐡造は本当はどんな人だったのか。

モデルとなった出光佐三に関する本を、もっと読んでみたくなりました。

『海賊とよばれた男』(上) 百田尚樹

初めての百田作品です。

だいぶ前に話題になった本で、タイトルが気になってました。

「海賊」。

どんな悪い人が主人公なのか思ったら、その正反対で、すっごいいい人でした。

「国岡鐡造」が作品中の名前ですが、モデルとなったのは「出光佐三」という方だそうで。

 

  • 戦争で全く仕事がなくなっても、社員を誰もクビにしない。
  • 商品が品薄になっても、ストックしておいた商品を値上げせず販売する。
  • 相手がGHQだろうと、国の役人であろうと、正しいことを主張する。

 

こんな感じで、すごく正義感が強くて、まっすぐで、正しい判断をする人。

だけど、その正しい人柄が、途中で飽きてきました。

飽きてきたというより、「本当にそうかな?」という疑問を持ちました。

 

例えば、一人目の奥さんと離婚する場面。

こどもができない奥さんをかばって、自分はそれでもいいと思っていたが、おじさんは妾を持つことを勧める。

そんな周りの空気を察してか、奥さんの方から離婚を切り出す。

鐡造は泣く泣く離縁する。

とか。

うーん。。。

 

あと、海軍も尻込みしてしまう、タンクの底の油をさらうキツイ仕事を受ける話も。

どんなに困難でもこの仕事をやらなければいけないって、社員の反対を押し切って引き受ける。

呼吸困難になるほど過酷な仕事、でも部下はよろこんでやる。

もちろん自分は(高齢なので)やらない。

とか。

うーん。。。

 

この鐡造がやることがすべて肯定されている感じが、なんかうそくさいんですよね。

もっと悪い部分があるはずだし、清濁両方ある方が魅力を感じそうです。

まだ上巻なので、下巻でどんな展開になるか、わかりませんけどね。

 

戦争時代の人物伝としては面白く読めるので、中学生ぐらいが歴史ものとして読むのはいいかもしれません。

その年齢だと正義一辺倒の方がわかりやすそうですしね。

 

ドロドロした部分はもうちょっと大人になってからということで。

『ハピネス』 桐野夏生

女性同士の関係は、男性同士のそれよりも、ずっとずっと繊細なものなのでしょうか。

特にママ友の付き合いの場合、学校や職場の人間関係と少し違い、
ある一定の距離感を保ったままの、ちょっと緊張感のある関係。

傍からは仲良さそうにみえるのに、相手が卒業した学校も、旦那さんの勤務先も、
話しの流れ、タイミングが合わないと聞き出すことはできない。

それを無視して、ずけずけ聞いてしまうのは、(別にいいっちゃぁ、いいんだけど)やっぱり避けたいもの。

男にはよくわからない世界が、そこにはあります。

『ハピネス』は豊洲のタワーマンションに住むママたちのお話。

必死で背伸びしてタワマンに賃貸で住む主人公は、オシャレなママ友たちになじめず、疎外感を感じてしまっている。

普通のマンションに住む、何でもはっきりものを言うママとは、
少し心が通じ合いそうになるが、オシャレなママたちを前にすると、ついつい仲が良くない素振りをしてしまう、心の弱い人。

夫も子供が産まれてすぐにアメリカへわたってしまい、音信不通に。

その原因をつくったのは、秘密にしていた自身の過去のせいなのだが、自分の親にも、姑たちにも、言えずにいる…。

主人公は桐野作品によく登場する“痛い人”ではありますが、今回は誰も死なず、血も流れません。

それだけにリアリティは他の作品よりも強い。

ママ友関係に疲れた人、悩んでいる人が読んだら、きっと何かヒントがある。

ってことはなさそうですが、意外なストーリー展開には引きこまれてしまいますので、
0歳児から5歳児くらいまでのお子さんがいらっしゃるママ(とパパ)は楽しめると思います。

なんでしたら、ママ友の間で回し読みして、

「あー、この人、〇〇ちゃんみたいだねー」

と盛り上がってみてはどうでしょうか。