『真夜中のマーチ』 奥田英朗

これまでに奥田作品は『オリンピックの身代金』『沈黙の町で』『ナオミとカナコ』あたりは読んだことがあります。

奥田英朗に限らず、短編集よりも長編が好きなので、今回もこの『真夜中のマーチ』を選びました。

今まで読んだ作品から、ハラハラドキドキの展開を期待していましたが、『真夜中のマーチ』は、そういうのじゃなかったです。

今回は期待していたのと、違う作品を手に取ってしまったようでした。

サクサク読めて、それなりに楽しめたんですが…。

主な登場人物はパーティー屋のヨコケン、三田物産に勤めるミタゾウ、クールビューティーのクロチェ。

あとはヤクザのフルテツやクロチェの父親、中国人などが絡んで、東京を舞台に大金を奪い合います。

しかし、お金の奪い合いによくある“すり替え”が使われていて、話の展開として驚きはありませんでした。

あと、どの人物にもあまり感情移入できませんでした。

自分が思い描いていた人物像が、小説を読み進めていくと、途中で変わっちゃうんですよ。

「あれ、この人、こんなキャラだったんだ」
「こんな行動しているけど、実は違うでしょ(と思ったら、そのままだった)」

という人物イメージの混乱が生じてしまい、最後までつかみどころがない。

サクサク読めて、それなりに楽しめるんですけどね…。

同じ系統のドタバタ犯罪モノなら、伊坂幸太郎の『陽気なギャングが世界を回す』の方がおすすめです。

最後に「やられたっ!」という読後感が強く残りました。

『真夜中のマーチ』にはそういう強烈なインパクトはなかったです。

サクサク読めるし、楽しい作品ではあるんですけどね…。

奥田作品はまだまだ読んでいないものがあります。

次はアマゾンレビューでも評価が高い『最悪』を読んでみるつもりです。

『騎士団長殺し』 村上春樹

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』以来、久しぶりに村上春樹の長編を読みました。

近年の作品は、なんか洗練されていますね。

村上作品では『ねじまき鳥』や『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『海辺のカフカ』等々が好きです。

たぶん冒険要素が強い方がいいんでしょうね。

今回も冒険はします。

前半は東北に。

これは冒険じゃなくて、旅か。

あと、かなり最後の方に、メタファーの世界に。

メタファーっていうと、わかりにくいけど、要は「穴」です。

今回もしっかり「穴」や「暗闇」がしっかり出てきます。

今回も主人公は、サラリーマンではありません。

画家です。

だいたい主人公は時間を持て余した自由業の人なんですよね。

僕が村上作品で一番好きなのは、この主人公が自由業なところです。

主人公は、自由業か、それに準ずるフリー的な、個人事業主的な人なんですよね。

その人たちの時間の使い方、仕事の仕方に一番興味を惹かれるんです。

自分が30歳のときからフリーになってから社会との距離感とか、関わり方、心の持ちようが変わってきていて、共感できる部分が増えているんだと思います。

今回で言えば、お金のために始めた肖像画家の仕事を、途中で辞めてしまい自分のための絵を描く。そして最後はまた生活のために肖像画を描く仕事に戻る、とか。

山小屋みたいなところで、ごく限られた人とだけ関わりながら創作活動をするところ、とか。

スケジュールが結構空いているところ、とか。

そういう文章を読むと、なんか勇気づけられる気がします。

ところで、まりえがクローゼットに隠れているとき、扉の前まで来たのは、誰だったのでしょうか?

メンシキさんでしょうか?

メンシキさんではないような書き方もされていましたが…。

『小説出光佐三 ~燃える男の肖像~ 』 木本 正次

先日『海賊とよばれた男』を読んだ際、この小説の存在に気づきました。

『海賊とよばれた男』は描写が少しコッテリしているというか、偏った印象を受けたので、もう少しフラットな視点で出光佐三を読みたかったのです。

こちらの『小説出光佐三』を書いたのは『黒部の太陽』の木本正次氏。

登場人物は実名で登場し、取材に基づいて描かれています。

少し出光興産の社史っぽい印象もありますが、できる限り事実を知りたいという動機からすると満足いくものでした。

出光佐三や日章丸事件、戦前戦後の石油業界を純粋に知りたい人は、『小説出光佐三』の方が向いています。

両方読むなら、先に『小説出光佐三』を読んで方がいいかもしれません。

あらすじは、大体同じです。

僕は先に『海賊とよばれた男』を読んだので、登場する人物や会社が、どっちが本当の名前かわからなくなって、少し混乱してしまいました。

『海賊とよばれた男』は、元々あったラーメンという料理を、店の内装やトッピングを変えて、時代にあったメニューした感じ。

行列に並んで食べる話題のラーメンではなく、昔からやっている素朴な中華そばを食べたいなら、『小説出光佐三』という印象です。