2017年 5月 の投稿一覧

『ハピネス』 桐野夏生

女性同士の関係は、男性同士のそれよりも、ずっとずっと繊細なものなのでしょうか。

特にママ友の付き合いの場合、学校や職場の人間関係と少し違い、
ある一定の距離感を保ったままの、ちょっと緊張感のある関係。

傍からは仲良さそうにみえるのに、相手が卒業した学校も、旦那さんの勤務先も、
話しの流れ、タイミングが合わないと聞き出すことはできない。

それを無視して、ずけずけ聞いてしまうのは、(別にいいっちゃぁ、いいんだけど)やっぱり避けたいもの。

男にはよくわからない世界が、そこにはあります。

『ハピネス』は豊洲のタワーマンションに住むママたちのお話。

必死で背伸びしてタワマンに賃貸で住む主人公は、オシャレなママ友たちになじめず、疎外感を感じてしまっている。

普通のマンションに住む、何でもはっきりものを言うママとは、
少し心が通じ合いそうになるが、オシャレなママたちを前にすると、ついつい仲が良くない素振りをしてしまう、心の弱い人。

夫も子供が産まれてすぐにアメリカへわたってしまい、音信不通に。

その原因をつくったのは、秘密にしていた自身の過去のせいなのだが、自分の親にも、姑たちにも、言えずにいる…。

主人公は桐野作品によく登場する“痛い人”ではありますが、今回は誰も死なず、血も流れません。

それだけにリアリティは他の作品よりも強い。

ママ友関係に疲れた人、悩んでいる人が読んだら、きっと何かヒントがある。

ってことはなさそうですが、意外なストーリー展開には引きこまれてしまいますので、
0歳児から5歳児くらいまでのお子さんがいらっしゃるママ(とパパ)は楽しめると思います。

なんでしたら、ママ友の間で回し読みして、

「あー、この人、〇〇ちゃんみたいだねー」

と盛り上がってみてはどうでしょうか。

『かあちゃん』 重松清

夫が交通事故を起こし、同僚を殺してしまう。
いじめっこの圧力に負けて、友達をいじめてしまう。
取返しのつかない過ちを、
人がどのように償えるか。

絶対的な正解がない問いかけなので、
いろいろな意見があると思います。

自動車事故の加害者側になった「かあちゃん」は、
自らが楽しむこと、笑うことを禁じてしまいます。

長い期間にわたって償い続けますが、
疑問に思ったのは、
そもそも事故を起こした「とうちゃん」には罪があるか、いうこと。

対向車がはみ出てきて、
よけようとしたんですよね?

ドライバーとして、他にどうすればよかったんでしょう…。

不可抗力とも言える事故を「かあちゃん」が背負って、
その息子も背負わされて。

この場合、一生かけて背負うのは分かります。
ただ、背負い方がちょっと違うんじゃないでしょうか。
なぜ自分だけ背負うとするのか。

でも、この「かあちゃん」はそういう理屈抜きで、
償わなければいけないと考えたんでしょうね。
その償い続ける姿勢は確かにズンときました。

もうひとつのストーリーがいじめにまつわるもの。

この自動車事故で亡くなった同僚のお孫さん(中学生)が、
友達をいじめてしまい、
自殺未遂にまで追い込んでしまった罪の意識で、
学校に行けなくなってしまいます。

この中学生が、償い続ける「かあちゃん」に影響を受け、
強くなって学校に戻ってくるところ(特にいじめっ子と対峙するところ)は、いいですね。

納得いかなかったのは、
このいじめっ子が最終的に、
なんかいいヤツみたいになっているところ。

しかも、いじめられっ子の片思いの相手は、
このいじめっ子を好きという…。

頭の悪いいじめっ子が読んだら、
「なんかオレも救われるかも」
と勘違いしてしまいますよ。

うーん。。。

ハッピーな終わり方じゃなくてよかったんじゃないでしょうか。

『海の深さを知らない者は』 桐生典子

桐生作品は2作目。

前回の『金色の雨がふる』が予想外に面白く、
他にどんな小説を書かかれているのか、
もっと好きになれそうか、を確認してみたい気が少ししたのです。

正確に少々難がある20代の女性(琶子)が、
ある日いきなり失踪してしまう。
しかも、その女性の母親が刺殺死体となって、実家で発見される。
恋人(修介)のもとに携帯メールが届くが、謎だらけ。
実は彼女は事件当日の記憶をなくし、言葉を発することができなくなっていた―。

母親を殺したのが誰か、
読み進めてもなかなか明かされないので、
謎解き要素もあるミステリーとしても楽しめます。

ただ、ミステリーとしては、
ちょっと強引な印象を受けるところもありました。

岩根崎邸で働く家政婦が、老人ホームのサエさまとつながっており、
家政婦の代役として潜り込めるところとか。

ミステリーファンだけに、
こういう設定上の細かいところは気になってしまうんです。
すみません。

これは、たぶん、親子の、特に母と娘の物語なんでしょうね。
親と子の関わりにフォーカスして読むといいんでしょうね。

僕もこどもができたので、
親と子、両方の立場で見られるので、
親子テーマは興味深かったです。

よその家庭を見ると、
「うちよりうまくやってそう」と思えても、
当人同士には他人から見たらわからない、
うらみつらみも結構あるんだろうな、と。

この小説ではドアーズの曲や『FRY ME TO THE MOON』が登場します。
音楽にうとい僕ですが、小説に出てくるとどんな曲なのか知りたくなります。
この後、YOU TUBEで検索してみるつもりです。